Arysta Life Science
巡礼8 りんごとともに
品種:祝(りんご)
所在地:青森県つがる市
栽培農家:古坂徳夫さん
農家さんのコメント:
もう一度、あそこに枝が広がったところが見たい。いまはそんなことを思いながら世話をしています。
 津軽長寿園に入ると、まず目に飛び込んでくるのが枝ぶり豊かな3本のりんごの古木だ。品種は、紅絞が2本、祝が1本。いずれも樹齢128年。現存する西洋りんごでは国内最古。昭和35年には県天然記念物に指定された。
 幾度もの病害虫の大発生や台風、雪害に耐えてなお累々と実を結ぶ姿は見る者に勇気と感動を与える。実際、年間数百人に及ぶという見学者の中には、これらの木を前に感極まって泣き出す人さえいるそうだ。
 植えたのは江戸時代生まれの古坂乙吉翁。明治11(1878)年4月に苗木を入手し、接木して増やした。その苗木は、明治8年に内務省勧業寮から青森県庁に配布された最初の3本の接木だという。
 現在の管理者は乙吉翁の曾孫に当たる古坂徳夫さん(56)。県りんご試験場を経て、現在は財団法人青森りんご協会に技師として勤めている。7年前に兄の卓雄さんが急逝したため、妻の俊子さん(51)と一緒にりんご園を引き継ぎ、兼業農家となった。
 以来、夫妻には休日というものがない。自宅のある弘前市からりんご園まではクルマで小1時間。平日の作業は出勤前の早朝だけでは追いつかず、帰宅後深夜にまで及ぶこともしばしばだ。昨年、仕事場とりんご園の中間地点に引越し、通う時間は半分になったが、休日返上での作業と見学者への対応は続いている。
 1.5haのりんご園の管理だけでも大変だが、3本の古木は春の剪定作業だけで4日半、これに風雪害対策などの手間が加わる。徳夫さんはすでに定年退職後は専業になることを決めており、俊子さんは今春、一足早く退職して専業の道を選んだ。
 徳夫さんが、紅絞の2本の古木のあいだの不自然に開けた空間を見上げて、こう語る。「元々ここには太い枝があったのですが、台風の強風がたまたま例年と逆向きに吹いたので、耐え切れずに折れてしまったんです。もう一度、あそこに枝が広がったところが見たい。いまはそんなことを思いながら世話をしています」
 この地にりんごの古木が残ったのは、気候風土のたまもの、まさしく適地適作だったからだという。その古木を縁の下で支えているのが、オーソサイドだと知ってうれしくなった。
写真/小松稔 文/杉本政光
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