Arysta Life Science
巡礼7 三世代が集うぶどう畑
品種:巨峰(ぶどう)
所在地:長野県上田市
栽培農家:松崎孝顕さん
農家さんのコメント:
最初はやってもやっても失敗ばかり。品種が変わればいまでも同じ。結局、そのぶどうのことをどれだけ知っているかが重要なんです。
 松崎孝顕さん(64)が妻のとみ子さん(62)と営む松崎農園は、上田市の中央を流れる千曲川の西、標高500mの富士山地区にある。主力商品はぶどう。ハウスと露地の両方で、巨峰やデラウェア、ヨーロピアングレープなどを栽培している。
 この地区でぶどう栽培が始まって今年で43年。孝顕さんの農業は、かつて主力だったホップをぶどうに切り替えるところからスタートした。初期に植えたぶどうの古樹の下で、孝顕さんが当時を振り返って話す。
「最初はやってもやっても失敗ばかり。品種が変わればいまでも同じ。結局、そのぶどうのことをどれだけ知っているかが重要なんです」
 以来、ぶどうとともに歩んできた。25年前からはりんごの栽培も始めた。JA信州うえだ川西りんご部会会長を経て、現在はぶどう部会の会長を務める。
 川西ぶどう部会では、栽培方法を互いに教え合いながら、高級ブランドである「エレガンス巨峰」や「ナガノパープル」など栽培が難しい品種にも挑んでいる。孝顕さんも「量の時代は終わりました。これからは質の時代です」と語る。
 ところで、松崎農園のぶどう棚の高さがやや低いので、孝顕さんに聞くと、とみ子さんの身長に合わせ150cmに揃えているからだという。下に目をやると、自慢だという粘土質の土壌は一面の下草に覆われ、カエルやトカゲ、コオロギが動き回っていた。
 週末には娘の西澤あきみさん(36)と平林かほりさん(34)が、家族を連れて手伝いにやって来る。出荷時に段ボール箱を組み立てるのは、孫娘の小学2年生の恵美香さんの役目だ。その弟の雄大くん(4)は畑で土まみれになって遊ぶのが好きだという。
 かほりさんの夫の大さん(36)は、東京の百貨店で有名ブランドを全国一にした流通のプロ。ネット直販で一番人気のりんごジュースを取り寄せ、松崎農園のものと飲み比べたところ味に大差はなく、「あとは売り方次第です」と太鼓判を押した。
 栽培方法を惜しげもなく教え合う農家、そして繁忙期に総出で支え合う家族。三世代が集うぶどう畑に、地域づくりや家庭づくりの大切さを教わったような気がした。
写真/小松稔 文/杉本政光
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