巡礼4 梅実る豊かな谷(その3)
品種:皆平早生梅(梅)
所在地:和歌山県田辺市
栽培農家:下澤理壱さん
農家さんのコメント:
うちの梅の木、まるで盆栽みたいできれいでしょう。これで漬けた梅干は羽二重餅のようにふっくら。まるで家内のようです。
江戸時代の初め、現在の田辺市からみなべ町にかけてやせた土地が広がり、農民は困窮した。その打開策として田辺藩主・安藤直次が奨励したのが、梅の栽培だった。さらに梅の栽培地はやせ地として免税し、これを優遇したという。
今日、和歌山県の梅は全国収穫量の約半分を占める。紀州の梅として知られ、代表的な品種に南高梅や古城梅がある。
今回訪ねた3つの梅畑はいずれも山に囲まれた谷にあった。山の急斜面を切り開いた畑に先人の苦労が忍ばれた。
皆平早生梅は江戸時代から伝わる在来種だ。果肉が柔らかく種が小さいので梅干の原料には最適なのだが、反収が少ないため栽培農家も少なくなり、今日では幻の梅と呼ばれるようになった。
「うちの梅の木、まるで盆栽みたいできれいでしょう」そう自慢する下澤理壱さん(57)は、妻の優美子さん(52)と一緒に、品種名にもなった皆平地区で、樹齢60年から70年になる皆平早生梅の古木を育てている。
下澤家では毎年50トンほどの梅干を出荷する。盛夏の天日干しは天候との勝負。「山にかかる雲を見れば大体天気はわかります」と優美子さん。理壱さんは「うちの梅干は羽二重餅のようにふっくら。まるで家内のようです」と笑顔で語る。
写真/小松稔 文/杉本政光
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