スパイデックスの特性と使用法

川畑 紳一郎

- トーメン農薬ガイドNo.82/C (1997.1.1) -


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1.はじめに

 昨年(1995年)3月にチリカブリダニ剤(商品名スパイデックス)が農薬として登録され、農業生産の現場では、その導入の意欲が高まっている。
 欧米諸国の施設園芸、特にオランダにおいては生物的防除は、ごく一般的になっているが、これを日本の生産現場に取り入れようとする場合、施設環境の違いなどがあるため欧米諸国における天敵の導入場面よりも、されにきめ細かい利用方法の確立が必要になる。
 本報告では、これまでに蓄積されてきたチリカブリダニの試験成績を分析し、放飼時期の違いによる防除効果などを見ることにより、チリカブリダニの特性と使用法、ならびに、イチゴの施設栽培における体系防除の試案を提案したい。

2.チリカブリダニの特性

 チリカブリダニは雌成虫で体長が約0.45mm、雄成虫で約0.35mm、卵は乳白色の楕円形で直径約0.2mm、雌対雄は約4:1。補食活動の最適温度は20〜25℃、発育零点、産卵低温限界温度は10〜12℃であり、最高限界温度は約30℃である。湿度は多湿を好み50%以下では悪影響があり、雌成虫の寿命は約30日である。チリカブリダニの補食数は若虫の時、ハダニの若虫を5頭、成虫になってからハダニの成虫を5頭、あるいは、幼虫を20頭、あるいは卵を20個程度である。
 チリカブリダニはボトルに入っており、1ボトルの中にチリカブリダニが2,000頭以上と副資材のバーミキュライトが一緒に入っている。

第1図 チリカブリダニによるハダニ類の防除効果
(11月〜6月の放飼)

第2図 チリカブリダニによるハダニ類の防除効果
(11月〜12月の放飼)

第3図 チリカブリダニによるハダニ類の防除効果
(1月〜2月の放飼)

第4図 チリカブリダニによるハダニ類の防除効果
(3月〜4月の放飼)

第5図 チリカブリダニによるハダニ類の防除効果
(5月〜6月の放飼)

3.試験結果

 イチゴ栽培でのチリカブリダニによるハダニ類の防除効果で、放飼時期が11月から翌年の6月までの試験成績23例をグラフに示した(第1図)。放飼直前を補正密度指数100として、放飼後の経過日数による変化を示した。全体的に放飼後3週間からハダニの密度が徐々に低下し、その後、長期間密度を抑制している。

(1)11月から12月に放飼した場合

(2)1月から2月に放飼した場合

(3)3月から4月に放飼した場合

(4)5月から6月に放飼した場合

チリカブリダニ
 
スパイデックス
 

第6図 イチゴ栽培に天敵を用いる体系防除法(試案)
(注)天敵導入の考え方(導入最適気温20〜25℃)

4.考察:体系防除方法の提案

 チリカブリダニの導入最適気温は、寿命と産卵数からみて、20〜25℃であるため、導入時期を秋口、春先と考え、それに他の害虫の発生に合わせて残効が長い農薬、短い農薬を組み合わせていく方法が考えられる(第6図)。
 上段にイチゴの作型のモデル図を示したが、この下の表の体系防除の骨格と各地の作型をうまく組合わせ、各地域ごとでチリカブリダニを用いた体系防除法を確立する必要がある。
 今後の検討課題として、第一に、チリカブリダニの導入適期の判断要因として最も重要である、温度要因の基準を地域と栽培体系ごとにいっそう明らかにする必要がある。
 第二に、チリカブリダニ導入後の状況判断の為に、各段階での効果の判定方法の確立が望まれる。イチゴの生産現場では、葉裏でハダニ類が吸汁、カスリ状の斑紋が発生するかが判定基準の一つとなっているが、今後、より簡便なハダニ類の密度推定法が確立されることが望まれる。

 最期に本報告を作成するにあたり、使用させて頂いた各地での試験データは、現地での生産圃場ならびに日本植物防疫協会委託による各都道府県試験場での試験において得られたものであります。御試験頂いた先生方、ならびに現場にて協力頂いた生産者の方々に厚く御礼申し上げます。

((株)トーメン生物産業部)

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